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病気の子どものワクワクは

まだまだ続く

おもちゃコンサルタント 荻須 洋子さん

荻須 洋子 さん(神奈川県川崎市)

元小学校教諭。1999年おもちゃコンサルタント取得。2000年から病院での遊びボランティア活動を開始。国立成育医療研究センター 『おもちゃライブラリー』は立ち上げ時から参加。認定NPO法人難病の子ども支援全国ネットワーク非常勤職員、同運営委員。プレイリーダーコーディネーター。認定NPO法人芸術と遊び創造協会元理事。

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アメリカでの取り組みを知り、日本でも

何かしたい!と奮起

おもちゃコンサルタントの病児の遊び支援リーダー的存在の荻須さんが、初めておもちゃコンサルタントを受講しようと思ったのは、3人の子どもの子育てがひと段落するのと同じ時期に次々に訪れたご両親の介護のため、自宅と実家や施設を行き来する毎日を過ごしていた時でした。

「外に出て息抜きしたい。自分の時間を持ちたい。これなら通えるかも?」と思ったそうです。

おもちゃコンサルタントを取得した数か月後にお母様が亡くなり、数年にわたった介護生活が終わり、やっと自由な時間が持てるようになりました。同年8月に、アメリカの小児病院などを訪れるスタディツアーが企画され、家族の応援もあって、初めての海外でしたが参加しました。

「この時に出会ったチャイルドライフスペシャリストという専門職の方、病院のプレイルームや病気の子どもたちのための通所施設などはどれも素晴らしく、日本でも何かしたいという気持ちが大きくなりました。」

2002年春に国立成育医療センターができ、「病気の子どもにとっても遊びやおもちゃが大事だ」という思いのもと、おもちゃライブラリーができました。神経内科を窓口に治療の一環として、子どもたちが訪れます。当時ボランティアスタッフは荻須さん一人で、週3回のボランティアが条件でした。

「週3回は多いと思いましたが、既にこの活動の意義も感じ、覚悟もできていたので、おもちゃライブラリーのボランティアスタッフになりました。」

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おもちゃライブラリーには500点以上のおもちゃがあります。

一人ひとりに合わせたおもちゃの工夫

「おもちゃライブラリーを利用する子の病気は、それまで出会ったことのない難しいものが多く、戸惑いました。病気のために体をうまく動かせなかったり、聴力や視力に問題があったり、発達も実年齢と違っていることも多く、おもちゃのサイズを小さくするなどの工夫が必要でした。発達障害の子どもたち一人ひとりに合わせて、狭い場所で遊べるようにしたり、光るおもちゃを用意したり、おもちゃの置く場所を一定にしたりと工夫をしました。

どんなおもちゃで遊んだらよいかわからない、と悩んでいた親御さんも、『我が子がこんなにおもちゃで遊べるということがわかった、手が動いた、明るい声で笑った』など喜んでいただきました。」

「まだ1歳で、脳梗塞のため片方の手しか使わないので、両手で遊べるものはないだろうかと相談された時、2リットル入のペットボトルに鈴などを入れたものを作ったところ、両手が伸びて遊んでくれたことがありました。『身近なものでいいのですね!』と、お母さまに大変喜んでいただいたことが、後に色々なおもちゃの工夫へ繋がったと思います。

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子どもと遊びながら、お母さまのお話しを聞く荻須さん

「おもちゃライブラリー」が病院に来る

楽しみに!

現在おもちゃライブラリーはどの診療科にかかっていても利用ができるようになりました。月.水.金の午前10時から午後3時まで利用可能で、2名ずつのボランティアが入るようになりました。現在はおもちゃコンサルタントと難病のこども支援全国ネットワークのプレイリーダー、約25名のボランティアが登録しています。

「病院に来るだけで負担も不安も大きいと思いますが、おもちゃライブラリーがあるおかげで、楽しみができました、大人でも楽しめます、と言っていただいています。」

数年前からおもちゃライブラリーの前にある、豆の木広場というプレイスペースで、おもちゃの広場を月に1回開催しています。ここでは、きょうだい児も遊びますし、手作りおもちゃができるコーナーもあります。毎回大勢の家族で賑わいます。

「病気であっても、子どもの遊びたい気持ちには変わりありません。その反応は小さなものかもしれませんが、そのことに気付き、一緒にその遊びいいね!面白いね!よくできたね!と言ってくれる人がいることは、遊びをより楽しいものにしますし、達成感や満足感を持たせ、その子の自己肯定感につながります。」

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おもちゃの広場に、株式会社リコーラグビー部BlackRamsの方がお手伝いに来てくださいました。

遊びの支援が届かない環境にも遊びを届けたい!

「最近では医療の進歩で在宅療養の子どもも増えました。重症心身障害児と言われる子どもたちもいます。なかなか遊びの支援が届かない環境にあると思いますが、医療関係者と連携することで、遊びの支援がもっとできるのではないかと思います。その実現例として、東京おもちゃ美術館では年に2.3回、スマイルデーというイベントを開催しています。なかなか外出ができない家族も多い、在宅難病児のご家族を、東京おもちゃ美術館の休館日に招待し、安心して遊んでいただいています。」

「おもちゃの工夫も更に進めていきたいと思います。スイッチおもちゃやロボットの導入なども将来は普通になっているのでしょうね。ワクワクはまだまだ続きそうです。病気を治すことはできませんが、生活が少しでも前向きで楽しいものになるように皆さんと一緒に活動を続けていきたいと思います。」