守隨 邦子さん(東京都小金井市)
保育士、ヘルパー二級、リトミック指導者の資格を持つ。50代を過ぎてから保育士の資格を得て、その中でおもちゃへの関わり方の必要性を感じ、おもちゃコンサルタント受講。2014年の7月におもちゃコンサルタント養成講座修了。その後、東京おもちゃ美術館学芸員として活動しながら、都立小児総合医療センター、国立成育医療センターなどで病児の遊び支援の活動にも参加している。
音楽の道からおもちゃの道へ
リトミック講師や子どもたちにピアノを教えたり、音楽関係のお仕事もなさっている守隨さん。
「リトミックを教えている中で、乳児について勉強するには保育士の知識が手っ取り早いと思い、50代を過ぎてから保育士の資格をとりました。」
保育士になってから、また新たな思いが生まれたそうです。
「自由な遊び方を封じたり、おもちゃは型通りに遊ぶべきという押しつけに疑問を感じました。
集団生活をしている子どもたちに求められる『遊び方のルール』やおもちゃについて学ぶことで、自分なりに考えられるのではと思い検索していたところ、おもちゃコンサルタントをみつけ受講しました。」
平日は幼稚園の親子リトミックの講師としてお仕事されている守随さん。その他に病児と遊ぶボランティア活動もされています。
「学生の頃、障がいのある方への料理ボランティアや、病児ボランティアも体験していました。異なる環境の子どもたちと接することで多くを学び様々な制約があろう病児とも遊びを通して関わっていきたいという思いがありました。」
おもちゃコンサルタントになってからは、難病の子供たちの東京おもちゃ美術館貸切デー「スマイルデー」にも参加。
「病児のお子さんだけでなく、保護者の方や一緒に来たきょうだいたちも、とても嬉しそうに遊んでいる姿が印象的でした。
バギーに乗った、表情のかたいお子さんの目の前にクーゲルバーンを持ち上げてみせたら、初めて嬉しそうな表情を見せてくれたんですよ!」
「自分で出来た!」を引き出すおもちゃ
小児病棟では、メンバーの方と一緒に「おもちゃの広場」を開催されています。
都立小児総合医療センターで開催されている『おもちゃの広場』は、月に1回、プレイルームとベッドサイドで遊びの活動をします。
メンバーは現在は4名。参加する子どもの数は2〜3名の日もあれば、10数名集まる日もあります。病棟によって人数や年齢、身体的状態は実にさまざまです。
「『できない』『わからない』『やって』と、お世話されることに慣れてしまっている子どももいます。
遊びを通じて少しずつ前向きな気持ちを引き出し、『自分で出来た!』と嬉しそうに話している様子を見て、私まで嬉しくなりました!」
「病名や家族構成、入院期間などは、病院からは教えられないことになっているので、初めて会ったそのお子さんと一期一会の遊び方を模索しながら遊びを進めています。
点滴や気管、鼻などのチューブに支障がないようにすることと、手や姿勢を思うように動かせずイライラしている場合などに、気が紛れるような楽しい遊びを提供できるように心がけています。」
と守隨さん。
どこに行く時もどのようなお子さんと会えるかわからないので、あまり構えずに、訪問するようにしているそうです。
おもちゃコンサルタントとして
たくさんのおもちゃを紹介したい
日々の活動の中で、守隨さんの思いは広がっています。
「病棟での活動は原則としておもちゃの持ち込みはできませんし、手作りおもちゃの活動もありません。でも、感染症などの注意を払いながら、手作りややさしい工作などができるようになるといいなぁと思います。
そして、たくさんあるグッド・トイを少しでも多く、病院にも病児にも紹介できたら!と思っています。」
高齢者と子どもが交流できる場を作ることが夢
高齢者施設でも活動されている守随さん。ご自身の体験の中から気づかれたこともあるそうです。
「子どもだけでなく、高齢者との関わりも多くあります。
認知症や身体的制約がある方がおもちゃで遊ぶことでイキイキとした表情と笑顔を見せてくれることがあり、病児との関わりと基本的には同じであると感じました。」
「保育園での活動で、10人の子どもたちと高齢者施設に行って10人の高齢者と遊びを通しての交流がありました。この流れを発展させていきたいと思いました。」
「子どもと高齢者、病児や障がいを持つ人、別々の小さなかたまりが多く、この垣根をとりたいという思いが強くなってきました。」
昨年度は認定NPO法人芸術と遊び創造協会の活動サポート助成金を獲得し、高齢者のデイサービス施設に子どもたちを呼んで、高齢者と子どもたちの交流型「おもちゃの広場」を開催しました。
「子どもと高齢者が一緒に遊べる場を作りたい」という守隨さんの夢が少しずつ形になりつつあります。