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診察室はおもちゃで

いっぱい!ドクターは

おもちゃコンサルタント!?

おもちゃコンサルタント 森 庸祐 さん

森 庸祐 さん(埼玉県熊谷市)

森医院こどもクリニック院長。2011年におもちゃコンサルタント養成講座修了。芸術と遊び創造協会「病児の委員会」メンバー。小児病棟へのおもちゃコンサルタント派遣事業、難病児の貸切り招待「スマイルデー」、病児の遊びとおもちゃケアセミナーの監修ほか、グッド・トイ選考委員、秩父市ウッドスタート誕生祝品選考委員を務める。和装を好み、お酒、相撲観戦、サイクリング、映画、海外旅行など、おもちゃ以外にも趣味がたくさん。

ホスピタル・トイ・キャラバンで地方の病院を訪れるときも、トレードマークの着物で得意の皿回しをご披露!

ホスピタル・トイ・キャラバンで地方の病院を訪れるときも、トレードマークの着物で得意の皿回しをご披露!

行くのが楽しくなる!?病院

森医院こどもクリニックの待合室や診察室には外国製の珍しいおもちゃ、国産の木のおもちゃ、絵本がいっぱい。それにおもちゃコンサルタントの保育士さんもいて、遊びを見守ってくれます。

 

院長の森 庸祐 先生自身もおもちゃコンサルタントです。ホスピタルプレイ(※1)やプレパレーション(※2)、ディストラクション(※3)に精通した病児の遊びの専門家でもあるのです。

診療「お口あーん」の時には、カエルのパペットが登場!

「ボクみたいに大きなお口、あーん出来るかな?」と言われたら、思わず子どもたちも大きなお口を開けて、のどの奥を怖がらずに見せてくれます。

「長年小児科医をやってきて、『子どもの専門家で何でも知っている』と思っていましたが、ボクは病気について知っているだけ。

 

保育士さんのように遊びや子どもたちを楽しませる専門家が、当たり前にクリニックに居て欲しいのです」

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森医院こどもクリニックの待合室の様子。おもちゃ屋さんみたい!?

ボクがおもちゃにこだわる理由

「大学病院に勤務していたとき、生まれたときから入院している子がいました。その子は、お父さんが持ってきた、プラスチックのおもちゃを毎晩大事そうに抱いて寝ます。

おもちゃをくれたお父さんが大好きな気持ち、家族との強いつながりを感じました。子どもたちの寂しい気持ちに寄り添うおもちゃってどんなものだろう?

 

逆に『自分の子には絶対にこれで遊んで欲しくないおもちゃ』も巷にあふれています。

自分の中で曖昧模糊としていた『おもちゃ』をキチンと学びたいと思い、おもちゃコンサルタント養成講座を受講しました。ネット検索したら、内容も怪しくはなさそうだったしね…(笑)」

「子どものころ、父が時々『好きなものを選んでいいよ』と欲しいものを買ってくれることがありました。ボクは父の無言のプレッシャーを感じて、いつも“本”を選んでいました。

 

本当に好きな“おもちゃ”なんかを選んで、父に『そんなくだらないものが欲しいのか?』と呆れられるのが嫌で、父が喜びそうなものを選んでいたのです。

 

おもちゃコンサルタントの資格を取って、おもちゃや遊びは、一見“取るに足りない、くだらない”ように見えますが、子ども(病児)にとって、遊ぶことは無くてはならない、とても大切なことなのだと再確認しました。」

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ホスピタル・トイ・キャラバンin埼玉県立小児医療センター。おもちゃコンサルタントがおもちゃを持って病院を訪れるイベント「ホスピタル・トイ・キャラバン」の一コマ。いつも治療を受ける子どもが、お医者さんになって、注射や治療をして遊んでいます。森先生も注射をされて「痛いよ~」

Kちゃんの「お地蔵さん」

「大学病院時代、受け持った4歳の女の子Kちゃんが長期の化学療法が終わり、ようやく個室から出られる日、Kちゃんに空を見せたくて屋上に連れ出すことにしました。

 

大学病院のいくつもの廊下や階段を歩いていると、彼女が突然、壁のくぼみにしゃがみ込みました。

 

昨日までベッド上だったから疲れてしまったの?大丈夫?と声をかけると、Kちゃんは嬉しそうに笑って『(見て!私は)お地蔵さん!』と答えたのです。消火器を収める壁のくぼみを祠に見立てのでしょう。ニコニコ笑いながらずっとお地蔵さんごっこを楽しんでいました。

 

そういえば、Kちゃんの部屋に『かさじぞう』の絵本がありました。そんなKちゃんを見ながら、病気でも、治療が大変でも、子どもたちはいつも遊びたい気持ちを持っている、と気がつきました。

 

このような子ども達との大切な時間に、じっくり関わりたいのですが、医師の立場では慌ただしすぎてなかなかできません。

 

おもちゃコンサルタントの活動をしていると、その時のKちゃんと同じ瞳をした子どもたちに出会うことがたくさんあります。おもちゃを通して遊ぶ時、それがボクの日常の忙しない気持ちを埋めてくれるのです。ボクにとっても大きな喜びやモチベーションになっています。」

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東京おもちゃ美術館の休館日に難病児とそのご家族を招待する貸切りイベント「スマイルデー」。おもちゃコンサルタントの他に、お医者さんや看護師も参加して、楽しく遊ぶ一日です。

※1 ホスピタルプレイ(お医者さんごっこ);実際の診察をスムースにする効果がある

※2プレパレーション;診察の場で、子どもがこれから受ける医療行為の中で見るものや感じることを、

おもちゃをはじめ様々なツールを用いてわかりやすく視覚的に伝えること

※3 ディストラクション;処置中の遊びを交えた介入により痛みや不安を緩和する方法として極めて有用